昨今、所得税の「103万の壁」国民年金の「130万の壁」が話題になっています。

国民民主党の玉木氏によると、所得税の対象となる103万の壁を178万に引き上げることで、多くの人がより働き、収入を増やし経済を活性化させましょうよという魂胆です。

世間の意見として、

結局その次の壁である、国民年金の「130万円の壁」があるため大きな意味はないのでは?

「130万の壁」の基準も引き上げてほしい!

といった声がSNS上で見受けられます。

所得税は税理士先生の専門ですが、私は社労士を目指す立場…

そこで今回は、国民年金の「130万の壁」について解説していこうと思います。

本記事は厚生労働省の2024年11月15日第20回社会保障審議会年金部会の資料を参考にしています。

国民年金の被保険者について

僕たち日本国民は20歳から60歳までの間は全員国民年金の被保険者となっています。

例外はなしです。

ただし、保険料を負担しなければならない人と、そうでない人の条件があるわけです。

被保険者の種類は3種類あり、簡単にまとめると次の通りです。

被保険者属性保険料支払いの有無
第1号被保険者自営業、学生約17,000円
第2号被保険者会社員・役員間接的にあり
(厚生年金から拠出)
第3号被保険者第2号被保険者の被扶養者なし

ほとんどの人が上記の第2号被保険者となるため、厚生年金で間接的に保険料を払っている扱いになっています。

130万の壁は被扶養者の年収基準

問題視されている「130万の壁」とは第3号被保険者の要件の一つとなっています。

第3号被保険者の者が年収130万円以上となると第1号被保険者または第2号被保険者へ切り替わることとなり、保険料が発生するということになります。

第1号被保険者となると毎月約17,000円第2号被保険者となると厚生年金保険料として毎月の給与の18.3%を支払わなければなりません。

「130万の壁」の年収要件について、さらに深堀すると次のようになります。

年間収入130万円未満
(障害者の場合は180万円未満)

かつ

<同一世帯の場合>
第2号被保険者(夫)の年収の2分の1未満

<同一世帯でない場合>
原則第2号被保険者の年収を上回らない

第3号被保険者であれば、保険料を払うことなく将来受け取る老齢基礎年金を増やしていくことができるため、出来れば第3号のままでいたい!ということになりますね。

最低賃金引き上げによる間接的な適用拡大

近年の世界的インフレに伴い、日本においても大卒初任給の引き上げや最低賃金の引き上げが行われています。

「130万円の壁」の問題の対象となるのはもっぱらパートで働く奥さんです。

つまり時給制で働いている人たちということになります。

ということは、最低賃金の引き上げにより、これまで同じ時間働いていたとしても、年収が130万円を超えてしまうということが生じてしまいます。

そうなると、働く時間を短くするしかありません。

所得税の基準103万の壁を引き上げたとしても、最低賃金が大きく引き上げられている近年の状況においては、その次の130万の壁によってすぐに希望通りに働けないという阻害が生じます。

最低賃金と時間数

最低賃金には地域別最低賃金があります。

令和6年時点での各都道府県の最低賃金と130万円働ける時間数をまとめると次表のようになります。

都道府県最低賃金 [円]週あたり時間数 [時間]
北海道1010円24.8時間
青森953円26.2時間
岩手952円26.3時間
宮城973円25.7時間
秋田951円26.3時間
山形955円26.2時間
福島955円26.2時間
茨木1005円24.9時間
栃木1004円24.9時間
群馬985円25.4時間
埼玉1078円23.2時間
千葉1076円23.2時間
東京1163円21.5時間
神奈川1162円21.5時間
新潟985円25.4時間
富山998円25.1時間
石川984円25.4時間
福井984円25.4時間
山梨988円25.3時間
長野988円25.1時間
岐阜1001円25.0時間
静岡1034円24.2時間
愛知1077円23.2時間
三重1023円24.4時間
滋賀1017円24.6時間
京都1058円23.6時間
大阪1114円22.4時間
兵庫1052円23.8時間
奈良986円25.4時間
和歌山980円25.5時間
鳥取957円26.1時間
島根962円26.0時間
岡山982円25.5時間
広島1020円24.5時間
山口979円25.5時間
徳島980円25.5時間
香川970円25.8時間
愛媛956円26.2時間
高知952円26.3時間
福岡992円25.2時間
佐賀956円26.2時間
長崎953円26.2時間
熊本952円26.3時間
大分954円26.2時間
宮崎952円26.3時間
鹿児島953円26.2時間
沖縄952円26.3時間
全国加重平均1055円23.7時間

東京ともなると週20時間と少し働くだけで130万円の年収要件を満たしてしまいます。

最低賃金が引き上げられるに伴って労働時間を減らす人が増え、逆に経済は滞ってしまうでしょう。

ちなみに、「月8.8万円の壁」「週20時間という壁」も存在します。

これは健康保険と厚生年金保険の被保険者要件となっています。

最低賃金の引き上げに伴い、週20時間働くことで自動的に月8.8万円を超える都道府県がどんどん増えています。

厚労省の資料によれば”別の壁”との調整も意識されながら今後の壁の引き上げが進められています。

上表を見ると、東京で週21.5時間で国民年金保険料が発生するということになります

これは憶測ですが、最低賃金の引き上げに伴い130万円の壁を超えてしまう週当たりの時間数が20時間を下回らない限りは、130万円の壁の引き上げは行われないのではないかと思われます。

まとめ

壁の基準の上げ方としては、物価変動や賃金変動に伴った方法があるべき姿です。

それも「ありとあらゆるすべての壁の基準を」です。

令和6年の最低賃金は全国平均で5.1%も引き上げられているわけですから、あらゆる壁の基準も5.1%引き上げるべきでしょう。

老齢年金の毎年の支給額は経済動向に応じて変更されています。

これと同じように、昨今話題になっている年収の壁の基準も弾力的に調整すべきかと思います。

事業者として

事業者として懸念されることは人手不足でしょう。

最低賃金が上がっていることによって、あらゆる壁がより意識され、労度時間を制限するパートさんが増えております。

今後の法改正に注目しながら、より一層の人材マネジメントに力を入れていくべきです。

ぜひ将来、社労士としてお力添えさせていただけたらと思います。

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