2025年改正で変わる失業手当のルール
失業保険とは会社を退職した後、次の仕事が決まるまでに支給される生活保障のことです。正確には雇用保険法によって定められている、求職者給付の一種で、「基本手当」と言われています。基本的には直近の賃金の5割~8割の金額を90日から150日に渡って受け取ることができ、勤続年数や年齢によって異なります。会社都合による退職の場合は支給制限されることなく受給できますが、自己都合退職の場合は支給制限がかかってしまします。また、この失業保険を受け取るためには雇用保険に加入している必要があり、これにも要件があります。これら、自己都合退職の支給制限と、雇用保険の加入要件が今後改正されるわけです。そこで今回は上手に失業保険を受けながら転職活動をするため、失業保険のルールについてまとめてみました!
<参照>雇用保険等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要
自己都合退職者への朗報!給付制限が短縮
失業手当を受けるには7日間の待機期間があります。また、自己都合退職の場合はこの待期期間7日の後の2カ月間は給付制限がなされ、失業手当は受けられません。この2カ月の給付制限が、2025年4月の改正により、1ヶ月へと短縮されます。この変更により、退職後すぐに収入が途絶える期間が短縮され、経済的負担が大きく軽減されることが期待されています。
なお、会社都合の退職であったり、体力の不足や心身の障害といった事由で退職する場合は、そもそも給付制限はなくすぐに受給できます。
また、教育訓練を受ける場合には、給付制限が完全に解除されるという特例も導入されます。
- 改正内容:自己都合退職者の給付制限がこれまでの2か月から1か月に短縮。
- 具体例:Aさん(40歳・勤続10年・自己都合退職)のケース
- 2024年退職の場合:給付開始は退職から2か月後。
- 2025年退職の場合:給付開始は1か月後に支給。条件によっては即支給。
- 給付額の例:月給30万円の場合、最大45万円受給可能(基本手当日額5000円×90日と計算)
雇用保険の加入条件も大幅緩和
現在は週20時間以上働く人が対象となっている雇用保険ですが、2028年10月以降は週10時間以上の労働から適用されます。これにより、短時間勤務のパートやアルバイトの方々も雇用保険の恩恵を受けやすくなります。例えば、1日3時間20分を週3日働くだけで加入対象になるため、多様な働き方に対応した制度となります。
雇用保険に加入することで負担が増えるという側面もありますが、雇用保険料は社会保険料と比較して圧倒的に少なく、月収10万円であれば600円程度で済みます。(※業種によって異なります。)600円程度払っておけばもしもの失業のときでも失業手当がもらえ、メリットの方が大きいです。
- 改正内容:雇用保険の加入条件が「週20時間以上」から「週10時間以上」に大幅軽減。
(※従来通り、継続して31日以上雇用されることも要件です。) - 例:パート勤務のBさん(50歳)は週12時間勤務でも雇用保険に加入でき、退職時に手当を受給可能になります。
新ルールの背景にある政策の意図
給付制限があると、2カ月後に支給が始まり、支給をしっかり受給し終えてから本格的な転職活動をするというケースが多く見受けられます。そうなると、この給付制限が転職の障壁になってしまい、労働市場の縮小に寄与してしまっているわけです。従って、この改正の目的は労働市場の安定化と人材育成の推進です。特に非正規労働者や自己都合退職者が経済的に困窮する状況を緩和し、スムーズな再就職を支援することが狙いです。短時間労働者の社会保険適用拡大も、働き方の多様化に対応する重要な一歩といえるでしょう。
- 政府の狙い:労働力人口の減少に対応し、失業者の早期再就職を促進。
- ポイント:失業中の経済的負担軽減と、新たなスキル習得支援が目的。
失業手当を受け取るための条件と手続き
自己都合退職でもすぐにもらえる仕組みとは
教育訓練を受講することで、自己都合退職者でも給付制限が解除され、失業手当が待機期間7日後から支給される仕組みが導入されます。これにより、離職後のブランク期間を最小限に抑えつつ、スキルアップの機会を得ることが可能です。
教育訓練とは厚生労働大臣の指定を受けた教育訓練のことで、約1万6000もの講座が対象となっています。受講料についても教育訓練給付が適用され、受講費用の20%~70%が支給されます。この教育訓練給付の支給率についても法改正により80%へ引き上げられる予定です。
転職前にスキルアップを目指したい方はぜひとも活用していただきたい制度です。
教育訓練と失業手当の併用でお得にスキルアップ
教育訓練給付制度とは?
教育訓練給付制度とは、厚生労働大臣が指定する講座を受講することで、受講料の一部を給付金として受け取れる制度です。約16,000もの講座が用意されており、業界特有の資格やスキルを学べる内容も含まれています。

給付率80%!対象講座を活用するコツ
2025年4月以降、給付率は最大80%に引き上げられます。これにより、高額な講座も実質的な負担を大幅に軽減して受講可能です。資格取得やキャリアアップを目指す方には絶好のチャンスです。講座選びは、自分のキャリアプランに合致する内容を選ぶことが鍵です。
- シミュレーション:Cさん(35歳)が20万円の講座を受講。
- 教育訓練給付支給額:16万円(受講費用の80%)。
- さらに失業手当:約50万円。
学ぶことで得られる意外なメリット
教育訓練の受講は、失業手当の給付制限解除だけでなく、再就職に有利な資格やスキルを身につけることで、新たな可能性を切り開く手助けとなります。また、労働市場での価値を高めることができます。
- 再就職率アップ:資格取得により給与交渉が有利に。
- 社会的信用の向上:専門性をアピール可能。
ハローワークでの申請から受給までの流れ
失業保険の申請の流れは以下の通りです。退職後にハローワークで求職登録を行い、失業認定を受ける必要があります。給付制限がない場合、支給開始は約5週間後です。初回認定日から1週間以内に振り込まれるため、計画的な生活設計が可能になります。
- ①事業主の届出
退職した会社が、退職者についての「雇用保険資格喪失届」、「離職証明書」を提出
- ②離職票を受け取る
事業主が「離職証明書」を提出することで「離職票」が帰ってくるので、それを受け取る。
- ③求職の申し込み
「離職票」を持参してハローワークにて求職の申し込みをする。
- ④失業認定日の指定を受ける
「受給資格者証」または「受給資格通知」が発行され、失業認定日が指定されます。
- ⑤失業認定日にハローワークへ行く
失業手当は28日おきにハローワークへ行き、失業の認定を受けなければなりません。この時に「失業認定申告書」と「受給資格者証」を提出し、職業の紹介を求めなければなりません。
- ⑥失業手当の支給
失業の認定を無事に受けられたら、約1週間後に失業手当が支給されます。
失業手当で得られる金額と計算方法
具体例で見る失業手当の受給額シミュレーション
例えば、退職前の月給が50万円で20年勤務した64歳(Dさん)の場合、基本手当は約110万円となります。この金額は4週間ごとの認定日に分割して支給されます。
- Dさんの具体的計算(月給50万円・勤続20年):
- 賃金日額 = 50万円 × 6 ÷ 180 = 16,666円/日
上限適用で賃金日額は7,294円となります。 - 支給期間:150日
- 受給総額:7,294円 × 150日 = 1,094,100円
- 賃金日額 = 50万円 × 6 ÷ 180 = 16,666円/日
再就職手当や追加の支援金も
退職後に再就職が決まった場合、残りの失業手当日数に応じた「再就職手当」や「就業促進定着手当」を受給できます。これらは、新しい職場での生活を安定させるためのサポートとなります。
再就職手当:早期再就職に成功すれば、就職後も基本手当の最大70%を追加受給することができます。
就業促進定着手当:再就職して6ヶ月が経過しており、以前の給料よりも給与が減ってしまった場合に受給することができます。
※64歳11カ月になる前に退職していることが必要です。65歳以降の場合は「高年齢求職者給付金」の支給対象となります。
給付金受給中の注意点
失業手当受給中は、適切な就職活動を継続する必要があります。また、就職が決まった際には速やかに報告し、不正受給を防ぐことが重要です。失業期間中の内職や隠れた副業が発覚すると、給付金の返還義務が発生します。
法改正を機に考えるこれからの働き方
雇用保険の適用拡大が与える影響
短時間勤務の増加や多様な働き方の広がりに対応することで、労働市場がより柔軟になります。この改正は、非正規労働者の社会的保障を強化する意義があります。特に雇用保険の加入要件が週20時間から週10時間へと大幅に短縮されることから、非正規雇用者にも手厚い支援が可能になります。
転職や再就職を計画的に進めるポイント
新しい制度を活用して、計画的な転職や再就職を進めるためには、自分のスキルや資格を見直し、必要に応じて教育訓練を受けることが有効です。準備のコツとして職業訓練やセミナーに参加して情報を仕入れるように努めましょう。
また、退職前に制度の詳細を確認し、計画的に手続きを進めましょう。教育訓練などを活用することで、退職後の生活を安定させることができます。
法改正を活かしてキャリアを有利に進めよう
2025年の法改正を理解し、自分に合った手続きを行うことで、失業手当を最大限活用できます。改正された制度を活用すれば、キャリアの選択肢が広がり、より安定した生活基盤を築くことができます。制度をフル活用して真円度のキャリアチェンジに挑戦してみてはいかがでしょうか?また、社労士やキャリアコンサルタントといったプロへ相談し、サポートを受けてみるのも効果的です。
さらに詳しい情報を得るためのリンクや参考資料
ハローワークのウェブサイトや教育訓練給付制度の検索システムを活用して、最新情報を確認しましょう。
参照リンク:ハローワーク公式サイト、教育訓練給付制度